法人診療所移転手続 要件
診療所移転の注意点
診療所移転の注意点① お金
【資金調達についての大事なポイント】
新規開設のための費用と資金調達方法が適切かどうか。
- 新規開設のための目安として、2ヶ月分の運転資金を確保してくださいと役所から言われます。
※保険診療の場合は2ヶ月間入ってこないというところから来ていますが、自由診療でも2ヶ月分は用意するようにと言われるので、一般的にも2ヶ月分の運転資金は用意が必要となります。
一般的には本院の内部留保金で賄うことが多いかと思いますが、
直近決算書の「現預金」額があまりない場合、
つぎの借入という方法がとられます。
- 借入による資金調達
借入によって資金を調達する場合には、金銭消費貸借契約を結ぶ時には使途を明確にして契約すること、また、返済の予定表も添付資料として出すことになるので用意してもらうことが望ましいです。
そして、内装費用、保証金、運転資金などの支出を、内部留保金と合わせきちんと賄える額を借入する必要があります。
【事業計画について大事なポイント】
診療所移転後の収支が安定しているかどうか。
【本院等の直近法人決算について】
診療所移転に際して、本院の直近決算が確認されます。
・本院等の直近法人決算が大幅な債務超過
本院等の直近法人決算が大幅な債務超過の場合、いま診療所移転して大丈夫?と役所から疑われます。結果、審査が厳しくなり場合により認可がおりない可能性もあります。
・本院等の直近法人決算が赤字
本院等の直近法人決算が赤字の場合、いま診療所移転して大丈夫?と役所から疑われます。結果、審査が厳しくなり場合により認可がおりない可能性もあります。
・本院等の直近法人決算でたまたま良くないお金の使い方が見つかる。
例:関連する個人事業クリニックのための支出がある。
例:MS法人のための支出がある。
例:役員への貸付金がある。
例:役員社宅がある。
例:有価証券を購入している。
そのほか下記のコラムも参照ください。
http://buninkaisetsu.tokyo/index.php?go=LovZ6U
診療所移転の注意点② もの
【診療所物件について大事なポイント】
移転先の診療所の物件とそこに入っている医療機関が構造上の問題が無いこと。
悪い例
・ 診療所と居宅の出入口が一緒であり、1階の診療所を通らないと2階の居宅へ行くことができない。
・ 道を挟んで正面にもう1つ待合室がある。
・ 診療スペースの中に待合室があり、各室が独立していない。
・ 診察室に手洗い設備が無い。
※定款変更仮申請の前に、保健所の担当者にあらかじめ、全体図を事前に見てもらうことが望ましいです。
新規診療所として診療所の名称を付ける時は、認められない名称もあるので保健所に確認をとっておくこと。
新規診療所の名称は広告の一環としてその使用が制限されています。その理由として、医療に関する広告は患者の治療する際に選択等に影響する情報であるからです。
広告可能とされた事項を除いては、原則として広告が禁じられています。
まず前提で、広告可能な診療科目の中には単独で診療科目として広告可能ものと、他の診療科目と組み合わせることによって広告可能なものがあります。
◎医療機関が標榜する診療科名として広告可能な範囲について
医業で単独で診療科目として可能とは、「内科」、「外科」です。
他の診療科目と組み合わせることによって広告可能となるものは
- 身体や臓器の名称
- 患者の年齢、性別等の特性
- 診療方法の名称
- 患者の症状、疾患の名称
の4つあり、「内科」「外科」と組み合わせることによって、診療科名として広告することが可能になります。
(不合理な組み合わせや4つの中の同じ区分に属する事項や異なる区分に属する事項同士は複数組み合わせることが出来ません ※小児老人内科、老人神経内科など)
また、「精神科」、「アレルギー科」、「リウマチ科」、「小児科」、「皮膚科」、「泌尿器科」、「産婦人科」、「眼科」、「耳鼻いんこう科」、「リハビリテーション科」、「放射線科」、「救急科」、「病理診断科」「臨床検査科」についても、単独の診療科名として広告することが可能とされています。
歯科医業では、単独で診療科目として可能なのは「歯科」です。
他の診療科目と組み合わせることによって広告可能となるものは
- 患者の年齢を示す名称
- 矯正、口腔外科など特定の領域を表す用語
の2つあり、「歯科」と組み合わせることによって、診療科名として広告することが可能になります。
(不合理な組み合わせや2つの中の同じ区分に属する事項や異なる区分に属する事項同士は複数組み合わせることが出来ません)
許可制の診療科目について
許可制の診療科目とは麻酔科であり、厚生労働大臣の許可を得た場合に限り広告可能とされています。
※医療法第6条の6第4項の規定により、麻酔科を診療科名として広告するときには、許可を受けた医師の氏名を併せて広告しなければなりません。
以上が新規診療所の名称として広告可能な範囲です。
先ほども記載しましたが、広告可能とされた事項を除いては、原則として広告が禁じられています。
【広告可能とされている中でも使ってはいけない文字や名称の例】
1. 実態に反する虚偽の名称
2. 優位性、優秀性を示すような誇大な文字
3. 法令に根拠のない名称
4. 病院と紛らわしい名称 等
1. 実態に反する名称
例えば、田中という医師が開設し、診療する診療所に「鈴木医院」という名称を付す。開設する診療所では皮膚科を扱っていないのに、「~皮膚科」と付す。
他にも整形内科や心療外科など不合理な組み合わせ等も認められていません。
2. 優位性、優秀性を示すような誇大な文字
例えば、最優秀○○クリニック、最強○○診療所や、最高、理想的、日本一、NO.1等のように、
他のクリニックと比べ優位性、優秀性を示すようなものを名称として付すことは認められていません。
3. 法令に根拠のない名称
- 医科に関係し認められていない名称
呼吸器科、循環器科、消化器科、糖尿病科 など
- 歯科に関係し認められていない名称
インプラント科、審美歯科 など
上記は診療科名と組み合わせた場合であっても、その広告は認められません。
※平成 20 年改正により広告することが認められなくなった診療科名 は「神経科」、「呼吸器科」、「消化器科」、「胃腸科」、「循環器科」、「皮膚泌尿器 科」、「性病科」、「こう門科」、「気管食道科」です。
平成20年4月1日以降、診療科名として広告することはできなくなりますが、同日前から広告していたものについては、看板の書き換え等、広告の変更を行わない限り、引き続き広告することができます。
4. 病院と紛らわしい名称
診療所が病院の名称を付すことは認められていません。
例として○○病院内科など診療所なのか紛らわしい名称も認められていません。
以上のように広告可能な名称の中にも、広告として使用が禁止されている文字や名称があります。上記はあくまで例であり、この他にも広告が禁止されている文字や名称はあります。
診療所の名称を決める場合には、保健所に電話をし確認することを、お勧めいたします。
※診療所の賃貸借契約について
移転先の診療所が賃貸だった場合には、各手続きで賃貸借契約書は必要になってきます。
・賃貸借の期間は長期間にわたるもので、かつ確実なものであることが要件となっています。
これは医療法人に対し、長期永続的に地域医療に貢献してほしいという趣旨があるからです。そのため、賃貸借が短期間では審査が通らない可能性が高く、期間は少なくとも3年間、そして、5年間、10年間あると望ましいです。
・契約書には契約の当事者と貸主が署名し、ハンコをもらう必要があります。
当事者は誰か、貸主は所有者か、など不動産の謄本を取って確認し、所有者が共有や相続で分かれていて複数人いる場合は、その全員からハンコをもらう必要があり、契約の当事者と貸主が明確に分かるようにしておく必要があります。
■そのほか物件契約注意点
・使用目的が診療所となっていること。事務所は不可
・登記をしてはいけないという条項がないことが必要。
・所有者が何名もいる物件で転貸物件要注意。元所有者承諾が必要となり、時間がかかる
・同じように信託物件も要注意、賃貸に際し賃貸人ではなく元所有者の承諾が必要となり、時間がかかる
・転貸人がMS法人の場合、MS法人(転貸人)と医療法人(賃借人)の賃料が適正か。根拠資料が提示が必要となる。
また、同MS法人への未払い金、借入金が決算書に計上されていると、このMS法人との関係性の説明を求められます。
■賃貸契約書の連帯保証人をだれにするか。
◎個人のどなたか
△株式会社等 ※MS法人を連帯保証人にするのは避けるのが望ましい。
×他の医療法人
診療所移転の注意点③ ひと
【移転先の診療所の院長について大事なポイント】
院長が臨床研修も終わっており、臨床研修終了登録を終わっていること。
医科のドクターは平成16年4月1日以降、歯科医であれば平成18年4月1日以降は、臨床研修を受け、臨床研修修了登録証があるドクターでないと診療所の院長になることはできません。
院長は、臨床研修を修了した後に保健所に届出をして臨床研修登録証を発行する必要があります。
注意するべき点として、よくある間違いが臨床研修修了証と臨床研修終了登録証との違いです。
臨床研修修了証と臨床研修終了登録証との違いは、臨床研究終了登録証は厚生労働大臣が発行しており、臨床研修修了証は臨床研修を受けた病院が発行しているという点です。
※医籍登録が平成16年3月31日以前、歯科医籍登録が平成18年3月31日以前の場合は、臨床研修を修了していなくても院長になることができます。
院長は、常勤で診療日にいること。
院長は診療所の管理責任があるため、開設営業する日は常勤勤務しなければいけないことになっております。
院長は、他の診療所等の院長でないこと。
院長が他の診療所等の院長になる場合、二か所(以上)管理許可申請をする必要があります。
院長は、開設する医療機関の利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと。
医療機関の開設・経営に影響を与えることがないものである時は例外となります。
院長を必ず医療法人の理事に加えること。
院長になっていただく方には医療法人の理事にもなっていただくということをご確認頂く必要があります。