医療法人理事長が分院開設予定診療所を個人開設で開業し、将来法人に取り込む事例
医療法人理事長が分院開設予定診療所を個人開設で開業し、将来法人に取り込む事例
分院設立予定の診療所をいったん理事長先生の個人診療所としてオープンして、1~2年後法人診療所として法人開設することは、財産関係の整理が求められます。
難易度は新規開業より上がります。
認可にかかる時間についても、基本的には必要な書類がそろい、
財産関係の整理さえできれば、多少の審査期間の延長はあり得ますが、
法人新規開業の場合と大幅に変わるものではありません。
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個人開業の際の注意点は下記のとおりです。
1 物件の賃貸借契約は理事長先生個人名義でしていただく必要があります。
法人は保証人にもなれません。
物件の賃借も法人に引き継ぎますので、貸主様の了承と、書類のご押印が必要です。
2 開業に必要な物品・医療機器類の購入も理事長先生個人名義でして頂く必要があります。
法人化の際には、固定資産(減価償却計算書に記載できる物品のみで、原則消耗品や一括償却資産等は引継できません。)は、法人設立時同様に基金拠出していただくか、理事長先生と法人の間で売買する必要が生じます。
その際の価格は簿価になります。
3 開業資金は、理事長先生個人から支出していただく必要があります。
借入をされる場合には、理事長先生個人名義で借入をされ、
法人は保証人になる等借入について関与することができません。
借入は法人化後法人が引き継ぐことが可能ですが、それには下記の条件があります。
(1)金融機関が借入名義変更に同意しており、借入名義変更書類に印鑑を頂けること
(2)設備資金の借入のみが名義変更可能であり、運転資金の借入は法人名義変更ができない
(3)設備資金の借入を名義変更する場合、物品購入の契約書と領収書が必要
また、物品購入の支払いについては、必ず融資実行後にお願いいたします。
4 リース契約、割賦販売契約(分割払いの購入)等される場合も、理事長先生の個人名義で契約する必要があります。
また、ご契約の際には、理事長先生個人から法人への名義変更が可能かどうかご確認ください。
上記等開業に関連する契約を、一部法人名義で契約等を行ってしまいますと、
法人が定款変更を経ないで診療所を開業しようとしたと役所が判断して、認可が非常に困難となる恐れがあります。
ポイントは必ず、医療法人と個人開設の院長の収支を別にする、契約も別にするということです。
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空賃料等を減らすために、個人診療所を開設してから法人化をご希望される法人様は多いのですが、認可申請時に上記の資金や物品関係の整理に詰まってしまい、
認可申請を取り下げるよう指導される事案というのは多いです。
個人診療所の取り込みは、個人開業時から計画的に行っていただく必要があります。
また借入に関して、運転資金は法人に引き継げず、理事長先生個人の借入として残ってしまうのが原則ですので新規開業で行くほうがコスト的にもよいのか、じっくりと検討頂ければ幸いです。