愛宕歯科クリニック様 診療所廃止事例
愛宕歯科クリニック様 診療所廃止事例
個人院での開業を経て平成5年に法人化した、
愛宕歯科クリニック様。
本院を東京に構え約30年間の経営を続けていましたが、
令和4年10月末に本院を閉院し、
同時に閉院した診療所を、別の先生に居抜きで譲渡しました。
通常の閉院手続きだけなら期限も無く、
役所とのやり取りも少なく終えることができますが、
譲渡を同時に進めるとなると
相手が診療所を引き取るタイミングや
申請の期限も気にしなければなりませんし、
そもそも譲渡先が医療法人か個人かによって
その手続き内容は大きく異なります。
また今回は本院を他県に
移転する手続きも同時に行いました。
今回は一連の流れについて、
愛宕歯科クリニックの榮田明美様には
当初の不安感、実際苦労した点、
また柏崎事務所に依頼してみての感想など、お話を伺いました。
県を跨いだ本院の移転は初めてで、
柏崎先生に丸投げでお任せしました。
柏崎:
今回は榮田様に、診療所の廃止と譲渡を同時に進める上で心配だったことや、
実際に苦労されたことがあったかというお話を聞かせていただきたいです。。
榮田様:
診療所の閉院や、分院診療所の閉院をする
という手続きをした経験はあったので、
閉院手続きの大変さは実感しておりますが、
今回の県を跨いだ本院の移転が
どの様に進んだかは丸投げで
お任せしていましたので、
状況などは分からないです。
今回譲渡した診療所について
柏崎:
まずは今回閉院して譲渡した診療所について教えてください。
榮田様:
個人院での開業は平成元年です。
それから分院を展開するために平成5年に法人化しました。
柏崎:
法人化後、約30年という事でしょうか。
長く経営されていますね。分院は何ヶ所ありますか。
榮田様:
一時は当法人だけで分院2つですね。
柏崎:
閉院された医院に関しては、
人員規模は常勤非常勤それぞれ何名程度でしょうか。
榮田様:
一番多い時は常勤の先生が3名、スタッフは4~5名
(アルバイトを含めて6~7名)いた時期もあります。
診療所の閉院時は
アルバイトの先生を含めて院長1名、
アルバイトの先生3名、スタッフは3名
(受付1名、衛生士1名、アルバイトの助手1名)
の体制でした。
弊所への依頼から譲渡先が決まるまで
柏崎:
では当時、柏崎法務事務所への依頼に至った経緯、
そしてその後どのようにお話が進んだか、お聞かせいただけますか。
その年の10月末に閉院予定という事で、
9月初旬に税理士法人からのご紹介でお問い合わせを頂きました。
その時閉院を決めた動機や状況についておうかがいしてもよろしいでしょうか。
榮田様:
10年程勤めていた院長が辞職し、
新しい院長先生を立てましたが、
事情により「数ヶ月単位はできるが長くは出来ない」
と事前に聞いていました。
その数か月後、また別の先生に代えて再スタートしましたが、
時期的にコロナ禍であった事と、
長く勤めてくれていた院長先生が、
目と鼻の先に新たに開業され、
さらにインプラントなど幅広い治療をしていたため、
多くの患者さんがそちらに流れてしまいました。
その時点で患者の数が激減していたので、
新しい院長先生が新患を開拓する事が難しく、
1年程度は頑張りましたが、
以前と同じ数の患者さんを取り戻す事が困難でした。
もしやる気がある若い先生が居るのであれば、
そういう方にクリニックをお譲りしたいと考え、
愛宕歯科クリニックを引き受けてくれる先生を探しました。
それで千葉の先生が「是非、そこで新しく開業したい」
との事でしたので、居抜きでお譲りする事にしました。
柏崎:
9月の第1週に弊社にご依頼のお電話をいただきましたね。
翌週位にはお譲り先候補の先生とお会いして
院内の物品の譲渡について話し合ったとお聞きしました。
その先生と最初にお会いした時はどんな印象を感じましたか。
榮田様:
40代になったばかりの若い先生で、
元々の住まいが都内でそこから千葉県に通っており、
通勤も大変ですとおっしゃっていました。
そこで、東京都内の路面で経営しており、
ある程度広さのある診療所を探しているとのことで、
うちが本院と分院を展開しているという事もあり、
その時点ですごく好印象を持っていただけました。
また、受付から診療まで英語で対応ができる診療所を
目指されるとのことで、地域的にもニーズがあり、
この先生ならきっと実現できると
イメージを持てたので、話を進めました。
相手の返答を待つしかなく心配で、
色々なパターンを想定した…
柏崎:
今回のケースでは、診療所の譲渡先の状況が、
申請のスケジュールに大きく影響する事が大きなポイントだと思います。
当初、診療所の譲渡先の先生は千葉県で
医療法人設立申請を進めていたとお伺いしましたが…。
榮田様:
医療法人を設立する予定と聞いてはいました。
まず友人の名前で開設し、
それから法人化するというお話をされていましたが、
今回の譲渡の話が進んでいたので、
法人化は一旦進めていないとのことでした。
「では、診療所の管理者は誰になるのか?」
「譲渡先は個人になるのか法人になるのか?」
という話をすると、先生は
『直接僕がやります』、
『千葉の診療所はそれと同時に閉めます』
との事でしたので、
予定通り譲渡が済んで診療所を開設してくれるのか、
スケジュールがずれないか…ギリギリまで結構心配致しました。
柏崎:
譲渡はその先が個人クリニックなのか、医療法人なのか、
医療法人の分院なのか、遡及なのかによって大きくスケジュールが変わりますし、
本当に買ってくれるのか不安になる事もあると思います。
医療法人設立直後の分院開設を都道府県が認めないと発言する場合、
また医療法人の開設を待ったのに結局譲渡が叶わなかったというトラブルで、
譲渡先の状況によってはいつまでたっても閉院できないこともあります。
■医療法人が医院を譲渡する手続きについて
(患者さんを引継ぐ場合<遡及あり>)
譲渡先 | 個人クリニック | 医療法人 | これから作る医療法人の分院 | 既にある医療法人の分院 |
---|---|---|---|---|
譲渡元閉院と譲渡先開院のタイミングについて | いつでも開設できるので、タイミングを合わせる必要なし | 年2回の申請時期、申請後6〜9ヵ月後に開院可能 | 法人設立後さらに6〜9ヵ月後に開院可能 | 4〜6ヵ月後に開院可能 |
譲渡元が閉院できる時期 | いつでも | 譲渡先の手続き完了後 | 譲渡先の手続き完了後 | 譲渡先の手続き完了後 |
榮田様:
「絶対にここでやりたい」
という気持ちの強さは感じました。
でも、診療所の譲渡がはたしていつ、
どういう形で出来るかは、もう待つしかない感じでした。
柏崎:
医療法人の医院を廃止するためには、賃貸借契約を廃止した上で、
新しい方がその契約を引き継ぐ事が条件になっており、
確かに相手の状況によっては
「いつまでも閉院できない可能性があるのではないか」
というお話をした記憶があります。
その時は幾つかのパターンをお話させていただきましたが、
どの様に感じましたか。
榮田様:
譲渡先の先生に早く引き継ぎの日にちを決めてもらえないかは、
ずっと心配事ではありましたが、
そうは思いつつもうちの方でやって下さっていた院長の
次の身の振りも決まっていましたので、
最悪家賃だけは払うしかないのかなとは思いました。
あとは仲介会社の方のお話ですが、
「家賃は次に買われる方が後で清算する事も可能です」
とおっしゃっていただいたので、
それ迄はうちで立て替えてでもお支払いして、
次の先生に譲渡した際に
ご清算いただければ良いかなと思っておりました。
私自身は割と楽観視できる方ではあります。
患者さんの引継ぎを前提とする遡及が必要かによって、
手続きの難易度は大きく異なる
■医療法人が医院を譲渡する手続きについて
(患者さんを引継がない場合<遡及なし>)
譲渡先 | 個人クリニック | 医療法人 | 医療法人分院 |
---|---|---|---|
譲渡元閉院と譲渡先開院のタイミングについて | タイミングを合わせる必要なし | タイミングを合わせる必要なし | タイミングを合わせる必要なし |
譲渡元が閉院できる時期 | いつでも | いつでも | いつでも |
患者さんの引継ぎを前提とする遡及が必要となると
譲渡元の廃院時期と譲渡先の開院時期を、
空き期間がないようにしなくてはならず、
それぞれの手続きのタイミングを合わせなければならず大変です。
譲渡先の状況によっては、
いつまでたっても閉院できないことも懸念されます。
今回は物件に強く魅力を感じておられた案件で、
患者さんへの執着がなく遡及が不要だったため、
手続きが比較的容易でした。
柏崎:
その後なんとか譲渡先が個人になると決まりましたね。
そして遡及も不要となったので、
廃院時期と開院時期はそこ迄合わせなくても構わなくて、
賃貸借契約書も締結さえできればいいという事で、
割と解決策のお話は出来た様なので、後はじっくり廃止手続きを行って
賃貸借契約を締結するスケジュールを確定した記憶があります。
榮田様:
遡及が不要だという事は安心材料でした。
遡及するとなると色々な手続き上、日付をいつにするかとか、
結構面倒な部分があるのかなと感じていました。
私自身も診療所譲渡の経験数は2〜3回でしたので、
遡及が不要で手続きがシンプルな状況であれば
そこ迄の問題はないかなと思ってはいました。
後は家賃契約の問題だけかなという感じですね。
柏崎:
そうですね。おっしゃる通りです。
家賃は譲渡先の先生に清算していただくお話はついておりましたし、
あとは遡及でないということで、
東京都への診療所の廃止に関する定款変更に関しては、
賃貸借契約の締結が遅れる事によってスケジュールがずれ込んだとしても、
そこまで影響がないと判断できました。
あとは相手の賃貸借契約書を待つ状況だったかと思います。
今回は譲渡相手の状況と希望をある程度確定をした事により、
スケジュールに余裕が生まれた事が大きかったと思います。
自治体への説明の仕方によって審査期間は大きく変わる
柏崎:
以前に板橋の診療所を売却された際には、
東京都から売買金額や譲渡契約の詳細を確認されたそうですね。
「今回も詳しく聞かれるでしょうか」と案じておられる内容のメールを
榮田様より一度頂きましたね。
榮田様:
板橋の時はうちの方で色々と手続きをした際に、
譲渡金額について、東京都の方から
「医院を譲渡する事で利益を出してはいけない」
と言われ、
「売却価格が妥当なのかどうかを示して下さい」
といった申し入れがありました。
それで会計事務所と相談して
譲渡価格が妥当かの証明を償却資産上で出しましたが、
今回もまた同じような証明が必要なのかと思っていました。
今回譲渡する診療所は30年程続けていたので、
機械や内装に関しては償却資産などもほぼ無い状態で、
リースだけ清算しても利益として残ってしまう様な状況でしたので、
また東京都から問い合わせがあるのかと思っていました。
しかし、今回はそういう事も無かったですよね。
柏崎:
今回のケースでは会計上、
譲渡金額に関する説明が若干難しい側面もあったと思います。
出来る限り審査期間が長引かない様に対応いたしました。
県外移転なので、場合によっては
もっと時間がかかる様な案件だったかもしれませんが、
予定通りに進めることができて本当によかったです。
榮田様:
例えば自分達で手続きをすると
伝えなくてよいことまで伝えてしまい、
「あれもダメ、これもダメ」
という事態になったかもしれませんね。
柏崎:
専門家に任せることで、
必要な情報を取捨選択したうえで申請することで、
役所に不要な反論を与えず、申請期間を長引かせないという
メリットはあるかもしれませんね。
「医療系の手続きに詳しい行政書士さんは、
なかなか少ないと思います」
柏崎:
譲渡先の属性が一旦法人から個人に変わった事や、
遡及をするかは途中まで不透明でとても心配だったと思います。
ですので、どの様なスケジュールなのかが分かりづらい中で、
相手が法人の場合、遡及の場合、遡及でない場合など、
色々なパターンのお話が最初の段階で出来た事が、
私達としても非常に良かったと思っています。
単純な診療所の廃止にプラス医院の譲渡が絡むと、
譲渡先の属性によって、大きくスケジュールや手続きが変わってきますので、
今回榮田様のお役に立てて本当に良かったと思っております。
榮田様が、単純な診療所の廃止だけではなく、
プラスで譲渡手続きも行う様な場合に、
他の先生方に向けて
「こういう風にやった方が良いですよ」
といったメッセージがあればおうかがいしたいです。
榮田様:
やはり自分達で手続きする事は、
結構無駄な労力がかかると言いますか、
東京都とのやり取りは特に本当に大変な労力になるかと思います。
うちとしては本院を東京都から埼玉県に移した事も含めて、
今回柏﨑先生に依頼をさせていただき、
専門家で経験値の高い先生でしたので、
割とスムーズに進んだのではないかと思っております。
柏崎:
ありがとうございます。
素朴な疑問ですがご紹介とはいえ、
知らない人から電話がかかってきて、
対面することもなく手続きを依頼する事は、
当初、若しくは途中でご不安になる事もありましたか。
榮田様:
診療所の譲渡については過去に自分達で2件経験があり、
色々な手間や大変な思いは経験していました。
医療系の手続きに詳しい行政書士さんは、
なかなか少ないと思います。
やはり医療法などの特別な内容が多いので、
通常の会社譲渡とは違うと思います。
特にうちは医療法人なので、本院の譲渡となると、
「何をどうしたらいいのだろう」といった状況でしたので、
「お任せしてこれで上手くいかなければ仕方がないね」
という心境でした。
長いお付き合いのある税理士法人からのご紹介ということもあり、
あまり柏崎先生への不安は無かったです。
柏崎:
最後に柏崎法務事務所について、
例えば、最初のお電話の印象など
おうかがいしてもいいですか。
榮田様:
すごくご丁寧な対応をしていただきました。
弁護士、司法書士、行政書士の方に対しては、
言い方は悪いですが高飛車な印象がありました。
「こうしたら良いんじゃないですか?」
という突き放す感じで言われることを覚悟していました。
役所なども結構ズバズバと、
言い切られてしまうことがありますよね…。
柏崎:
ありがちですね…。
榮田様:
柏崎さんが手続きをする時は、
大丈夫なのかなと思うぐらい丁寧な印象でした。
柏崎:
どの辺りでそれを感じましたか。
榮田様:
最初の電話や今もそうですが凄く丁寧な対応です。
はっきりと「それは出来ないとか言って下さっても良いですよ」
と言いたくなるぐらいの印象です。
こちらを気遣って下さる感じを受けました。
柏崎:
そうですか。
そうであれば依頼をして安心する気持ちには
繋がるかもしれないですね。
榮田様:
そうですね。
柏崎:
過去に専門の士業の方で
丁寧でない方もいたという事でしょうか。
榮田様:
そうですね。
何人か弁護士さんと繋がりがあってお話する機会はありましたが、
人によっては「これはこんなものですよ」とはっきり言われ、
こちらが圧を感じてしまって
話しづらい方もやはりおられました。
柏崎:
その方の理論に従わざるを得ない様な形ですね。
お願いしづらい雰囲気の士業さんだと、
ちょっとしたことでも
依頼しづらくなってしまいそうですね。
榮田様:
そうですね。
その弁護士さんには顧問をお願いしようかと
最初は思っていましたが、
やはりその先生だと私の言いたいことが
伝わらないかもしれないと思い、
ご遠慮させていただいたことはあります。
柏崎:
私自身もそういう方が一番苦手です。
気を遣ってしまい、
結局自分の希望通りの事が依頼しづらい感じですね。
私自身はそうならない様に気をつけているので、
榮田様に安心していただけたなら大変良かったなと思います。
榮田様:
柏崎先生であれば色々と
ご相談もしやすいだろうなと思います。
柏崎:
また何らかの機会があれば、
遠慮なくご相談していただければと思います。